イタリア新時代の知性派
ジャンルカ・カシオーリ ピアノ・リサイタル

2015年6月12日(金) 開演:19時

  • 主催公演
  • クラシック
  • 紀尾井ホール

主催:日本製鉄文化財団

賢者は道を急がない
 時代は細切れにスピードを上げている。だとしたら、芸術ほど手間と時間のかかることは、なおさら強く、柔かな意志をもつ。真実は消費されないからだ。
 ジャンルカ・カシオーリは、じっくりと考える。そして、じっくりと音楽をする。当然のことだ。どうあれ、西欧音楽の歴史からみれば、一瞬のできごとなのである。彼のピアノが空間と時間を満たすに相応しい、たっぷりとした想像力と響き、広がりと奥行きをもつように、カシオーリという音楽家もまた周囲に惑わされず悠然と歩んできたに違いない。
 イタリア新時代の知性派として、10代半ばから鋭い注目を集めて、アバド指揮ベルリン・フィルとも来日した。21世紀に入ってなかなか再来が果たされずにいたが、やはりイタリアに基礎のある庄司紗矢香がデュオ・パートナーとしてまた日本に連れてきた。その折にも、カシオーリは巨匠演奏家への深い尊敬と作曲への情熱を語り、意気投合した名手ふたりはゆったりと響きの時間を保ちながら、明晰で綿密なデュオ演奏をくり広げた。
 さて、紀尾井ホールでの初夏のソロ・リサイタルは、2012年の秋以来の待望の機会となる。多種多様な作品で時代を自在に行き来するものだが、随所に結びつきをもって全体を有機的に交響させることだろう。モーツァルト、ショパン、リストから、ドビュッシー、リゲティ、モッソ、そして自身の作曲の師でもあるコッラの新作で現在へとわたる目くるめくカレイドスコープが、カシオーリの濃密な音、綿密な読みと遠大な想像力で悠然に織りなされていく。
 ジャンルカ・カシオーリが、まわり道をしてきたのかどうか、私たちはよく知らない。若い頃から思索的な演奏を探求してきた彼だ。どうあれ、必要な道のりを、自身の求める歩調で、じっくりと歩んできたのに間違いはなかった。その確かさを証しする貴重な音楽会となるだろう。

青澤隆明


カシオーリからのメッセージと演奏

出演者
ジャンルカ・カシオーリ(ピアノ)
曲目
  • モーツァルト:ピアノ・ソナタ 第13番 変ロ長調 KV333 NAXOS
  • コッラ:夜想曲 第7番 《MOSARC》(日本初演)
  • リゲティ:練習曲 第1集より 第2番「開放弦」 NAXOS
  • リゲティ:練習曲 第1集より 第4番「ファンファーレ」 NAXOS
  • モッソ:ピアノ・フォルテのための 《Secondo Quaderno》
  • ドビュッシー:12の練習曲より 第1番「五本の指のための(チェルニーによる)」 NAXOS
  • ドビュッシー:12の練習曲より 第6番「八本の指のための」
  • ショパン:練習曲 変ト長調「黒鍵」Op.10-5 NAXOS
  • ショパン:練習曲 変ホ短調Op.10-6 NAXOS
  • ショパン:練習曲 変イ長調「エオリアン・ハープ」Op.25-1 NAXOS
  • ショパン:練習曲 へ短調Op.25-2 NAXOS
  • ショパン:練習曲 ハ短調Op.25-12 NAXOS
  • リスト:巡礼の年 第2年「イタリア」より「ペトラルカのソネット 第104番」 NAXOS
  • ショパン:スケルツォ 第2番 変ロ短調Op.31 NAXOS
  • 【備考】表示のある曲は試聴できます。詳細はこちら。
チケット料金(税込)
(単券) S席:7.500円 A席:5,000円 学生A席:2,000円【紀尾井ホール開館20周年 友の会会員15%割引対象公演】

≪6月29日(月)ラルス・フォークト(ピアノ)公演との2公演セット券≫
一般発売日(セット券)2015年2月28日(土)
友の会優先発売日(セット券) 2015年2月25日(水)
S席:12,000円 A席:8,000円
 

※乳幼児等未就学のお客様のご同伴・ご入場はご遠慮ください。

※曲目は予告なく変更となる場合があります。予めご了承ください。

チケットお取扱い
紀尾井ホールチケットセンター 03-3237-0061
(10時~18時/日・祝休)
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お問合せ

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(10時~18時/日・祝休)

出演者プロフィール
  • ジャンルカ・カシオーリ(ピアノ)

    1979年、イタリアのトリノ生まれ。ピアノをイモラのピアノ・アカデミーでフランコ・スカラに師事、作曲をトリノのジュゼッペ・ヴェルディ音楽院でアレッサンドロ・ルオ・ルイおよびアルベルト・コッラに師事。

    94年、ウンベルト・ミケーリ国際ピアノ・コンクール優勝。以来ヨーロッパ、北米、日本の主要な音楽都市に演奏の場を広げ、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、カメラータ・ザルツブルグ、ヨーロッパ室内管弦楽団、ウィーン交響楽団、ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団、フィルハーモニア管弦楽団、マーラー室内管弦楽団、ミラノ・スカラ座フィルハーモニー管弦楽団、ミラノ・ジュゼッペ・ヴェルディ交響楽団、サンクトペテルブルグ・フィルハーモニー交響楽団、ボストン交響楽団、シカゴ交響楽団、ロサンジェルス・フィルハーモニック、ニューヨーク・フィルハーモニックなど著名なオーケストラと共演。また、クラウディオ・アバド、ウラディミール・アシュケナージ、チョン・ミョンフン、ワレリー・ゲルギエフ、ダニエル・ハーディング、リッカルド・ムーティ、ロリン・マゼール、ズービン・メータ、ユーリ・テミルカーノフ、ムスティスラフ・ロストロポーヴィチなど名だたる指揮者との共演は数えきれない。

    日本での顕著な活躍は、2000年クラウディオ・アバド指揮ベルリン・フィルのソリストとして共演。ベートーヴェン「ピアノ協奏曲第1番」を演奏し賞賛を浴びる。2015年5月~6月に予定しているヴァイオリニスト庄司紗矢香とのデュオ・リサイタルは、2010年、2012年に続き3回目の日本ツアーとなる。

    録音ではドイツ・グラモフォンより、バッハ、ブゾーニ、ベートーヴェン、ドビュッシー、ファリャ、リスト、プロコフィエフ、スカルラッティ、ヴェーベルン、シェーンベルク、リゲティ、ブーレーズ等の作品を収めたCDアルバム3枚に加え、2014年にはモーツァルトのソナタを収録した4枚目のソロ・アルバムをリリース。他のレコーディングでは、マリオ・ヴェンツァーゴ指揮バーゼル交響楽団とのシューマンのピアノ協奏曲がある。また、デッカ・レコードからはショパン、ドビュッシー、ベートーヴェンと3枚のアルバムをリリースしている。

    カシオーリは作曲家としても活躍している。彼の作品はハンブルク・ライスハレ(旧称:ムジークハレ)、ウィグモア・ホール、カタルーニャ音楽堂、フェニーチェ劇場などで演奏されている。2010年「Three lyric pieces」でI.C.O.M.S作曲コンクールで優勝。「2 Agosto」で国際作曲コンクール・モーツァルト賞を獲得後、自作「ピアノとオーケストラのための幻想曲」をボローニャ歌劇場管弦楽団との共演で演奏し、イタリアの国営放送局RAI3によってライブ放送された。2012年4月、フランチェスコ・アニェッロ・ナショナル作曲コンクールでオーケストラ作品「Trasfigurazione」が第1位を獲得。同作品は、フェニーチェ劇場管弦楽団、トリノ王立歌劇場管弦楽団、ボルツァーノ・トレント・ハイドン管弦楽団、フィレンツェ五月音楽祭管弦楽団によりイタリア各地で演奏された。

    ジャンルカ・カシオーリ(ピアノ)

    ジャンルカ・カシオーリ(ピアノ)

    ©Matteo Maso

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