「オリンピーアデ」の前に…
シチョーネ(古代ギリシャの都市国家キシュオン)の僭主クリステーネ(ギリシア語でクレイステネス)の美しい娘アリステアは、古代ギリシアで行われていたオリンピックの祭典競技で数度にわたって優勝したことのあるアテネの高貴な青年メガークレと愛し合っていました。しかし、アリステアの父クリステーネはアテネの名を嫌っていたため、メガークレとアリステアとの結婚の許しを与えず、メガークレは失意のなかクレタ島に赴きます。そこでメガークレは追剥に襲われますが、クレタ島の王子として知られるリーチダに助けられ、一命を取り留め、メガークレはリーチダとゆるぎない友情を築いたのでした。
リーチダはクレタ島の令嬢アルジェーネと愛情で結ばれ、密かに婚約もしていました。しかし、クレタ王はその結婚が身分違いのものであるとして許ざず、望みを失ったアルジェーネは、祖国を捨て、身分を隠してエーリデへと逃げてしまいます。エーリデで、アルジェーネはリーチダの一族やクレタ王から身を隠すため、羊飼いの服を着て、「リーコリ」と名を変えて暮らしていたのでした。
エーリデの村では、4年ごとにギリシャ全土から参加者が集うオリンピックの祭典競技が開催されていましたが、リーチダは、愛するアルジェーネがいなくなってしまった悲しみを紛らわせようと、これに参加することにします。リーチダは、メガークレをクレタ島に残し、ひとりエーリデにやってくると、このオリンピックの祭典競技の代表として選出され、シチョーネからエーリデにやってきていた僭主クリステーネと出会います。
クリステーネは、オリンピックの祭典競技の優勝者に自分の娘アリステアをめとらせると決めます。リーチダは、以前に愛したアルジェーネを忘れてそれを賞賛し、さらにそのアリステア姫を見て、恋に落ちるのでした。しかし、リーチダには戦いの経験がなく、優勝には程遠いと感じます。そこで、オリンピックの祭典競技で優勝経験のある親友メガークレを、自分の身代わりとして戦わせて優勝させることを思いつきます。しかし、もちろんリーチダはメガークレがアリステアと昔、恋に落ちていたことなど知る由もありません。友であるリーチダからの強い願いもあって、メガークレもエーリデの地に向かいます。
このオペラはここからが始まり。リーチダに友情を感じてオリンピックの祭典競技に出場する英雄的なメガークレ、愛情の深いアリステア、不義と打算の人リーチダ、そして、寛大で貞節を守るアルジェ一ネらが織りなす人間模様のドラマが描かれ、最後にはふたつの愛が結実します。