常磐津兼豊さん(常磐津節浄瑠璃)
「江戸時代から続く常磐津の表現者になる!」

このコーナーでは、旬の演奏家にご登場いただき、その人となり、邦楽との出会い、魅力などをお聞きしていきます。
第4回は常磐津節浄瑠璃の常磐津兼豊さんです。

 

常磐津兼豊

―――お稽古を始めたのはいつごろからですか。

 物心ついたころにはもう始めていたように思います。家が花柳界のそばにありましたため、父が教える稽古の様子を階段の下で聞いていた記憶がありますね。 舞台にも3歳のころから立たせてもらいました。身の周りにお三味線や、日本舞踊、囃子、そして浄瑠璃がごく自然にそこにあるという環境でした。

―――本当にこの道で行くのかしら?と迷われたことはありましたか?

 いつも思っていました。私は色彩に興味があって美術系への憧れもずっと持ち続けていましたが、父からとにかく大学には行きなさいとの命令(笑)で藝大音楽学部 邦楽科に入学しました。そこでは絵画、彫刻をはじめとした美術やヴァイオリン、ピアノなどさまざまな洋楽器、クラシック音楽も溢れていてとても刺激的でした。
 そしてある時、あらゆる芸術の根本は同じ「表現すること」と気付いたのです。ならば、幼い頃からせっかく身に付けてきた、江戸時代から続く常磐津の表現者になろう!と決心がつきました。

―――常磐津とはどのようなものでしょうか。

 常磐津は京から江戸に渡り、江戸で育った浄瑠璃(三味線を伴奏にして物語を語る「語り物」)の中でも、自然な発声がその特徴です。歌舞伎的なセリフ部分が多く出てきます。お話があってそれをそれぞれの登場人物のリアルなセリフで展開していく、写実的なところがあります。代表的な演目には「将門」(「忍夜恋曲者」=平家再興をもくろむ妖術使いとその討伐の物語の時代物)や、「三世相」(「三世相錦繍文章」=江戸深川のお園と六三郎の織り成す恋物語をはじめ、三社祭礼の描写、地獄の閻魔大王とのやり取りなど江戸世話物の大作)などがあって、男女さまざまな人物が登場し丁々発止のやり取りが繰り広げられます。
 それから、常磐津は3挺4枚(3人のお三味線方と4人の太夫=語り)がオーソドックスな構成となっています。お三味線と太夫の息の合わせ方、音色の変え方などもぜひ聴いていただきたいところですね。いわば室内楽、セッションです。

―――兼豊さんのお得意、「真骨頂」はどんな部分でしょう。

 浄瑠璃には景色物(情景を語るもの)と段物(物語を語るもの)の2種類ありますが、私は段物がとても好きです。高貴な人物から、一般庶民までさまざまな役柄を演じ、幅広い人間模様を語れるところが非常に面白いですし、醍醐味です。

―――最後に、常磐津浄瑠璃のアピールをぜひ!

 常磐津は「日本のオペラ」と言えるでしょうか。江戸のドラマを語る日本版オペラです。物語の中で登場人物が語るセリフ劇を、演奏会場でじかに楽しんでいただけたらと思います。

藤舎呂英

常磐津 兼豊(ときわづ かねとよ)
東京都生まれ。昭和50年父常磐津文字兵衛(現常磐津英寿)に常磐津節浄瑠璃を師事。平成8年、二世常磐津兼豊を襲名。東京藝術大学音楽学部邦楽科卒業。在学中安宅賞受賞。平成21年国立劇場「明日をになう新進の舞踊・邦楽鑑賞会」に常磐津女流立語りとして出演。

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