鶴澤津賀花さん(義太夫三味線)
「24歳のとき、文楽公演で義太夫三味線の音色にしびれた。」

このコーナーでは、旬の演奏家にご登場いただき、その人となり、邦楽との出会い、魅力などをお聞きしていきます。
第9回は女流義太夫 三味線弾きの鶴澤津賀花さんです。

 

鶴澤津賀花

―――義太夫三味線との出合いは?

 4歳からピアノを続けてきましたが、高校のときに、いろいろな音楽を学べる学科があることを知り、音大で音楽学学科を専攻、お箏、長唄三味線、沖縄の三線などを習いました。文楽との出合いは卒業後、24歳のとき。文楽公演で義太夫三味線(太棹三味線)の音色にしびれてしまいました。三味線の中でも太棹はものすごい迫力で、カッコいい!カルチャーショックでした。以来、東京や大阪の文楽公演に通い詰めていました。ある時、義太夫協会が主催する義太夫教室のチラシを発見、ついに教室に入ったのです。

―――義太夫教室から女流義太夫への道が開かれたのですね。

 義太夫教室では、歌舞伎や文楽が好きでお稽古をしたい人もプロを目指す人も、1年間一緒に稽古を受けます。卒業後は、つきたい師匠の元でそのままお稽古を続ける人もいますし、プロ志望の人は義太夫協会の試験を受けて「見習い」になります。普段は師匠の元で稽古を受け、身の回りのお世話なども覚えながら、協会公演では楽屋のお手伝いをします。1年ほどの見習い修行ののち、試験に合格すると、プロとして名前をいただき、協会の定期公演で初舞台となります。私は、義太夫教室第49期を受講後、女流義太夫人間国宝の竹本駒之助師匠に入門して、初舞台は2001年でした。

―――駒之助さんは太夫(浄瑠璃の語り手)ですが、三味線の稽古もなさるのですか?

 駒之助師匠はお若い頃に三味線もしっかり稽古をされた方なので、三味線も厳しくご指導くださいますが、文化庁新進芸術家研修を受ける時に、文楽の六世鶴澤燕三師匠に三味線の指導を仰ぎ、以来師事しています。演奏会で新しいものをさせていただく時や、再度勉強し直したい時に、稽古をお願いします。
 駒之助師匠と燕三師匠お二人の、一切の妥協を許さない芸に対する厳しい姿勢を心から尊敬し、一歩でも近づきたい一心です。

―――女流義太夫の皆さんの活動について教えてください。

 普段は、駒之助師匠のご連中さん(素人の方)の稽古にうかがい、師匠が語りを教えている横で、脇弾きをさせていただきます。ご連中さん方は、年2回ある素義会(ご連中さんの発表会)に向けてとても熱心に稽古をされます。この脇弾きは、さまざまな演目の語りを覚えることができるので、私自身とても勉強になります。
 もちろん自分の芸を磨いて舞台で演奏することが第一ですが、ご連中さんへの稽古を通じて、文楽や歌舞伎のファンの裾野を広げることも、私たちの大事な役目と思っています。そして、女流義太夫もいいなと思ってくださる方が増えることも目標です。

―――最後に素浄瑠璃の魅力を。

 素浄瑠璃は人形がないので、純粋に音楽として義太夫節を楽しめるところが魅力。語りと三味線だけで、登場人物の心情や情景を表現して物語を描き出します。これこそが素浄瑠璃の醍醐味ですね。

鶴澤津賀花

鶴澤 津賀花(つるざわ つがはな)
福井県生まれ。1998年竹本駒之助に入門。2001年国立演芸場にて初舞台。2006年文化庁新進芸術家国内研修で三味線を六世鶴澤燕三に師事。2011年清栄会奨励賞受賞。2017年第38回松尾芸能賞新人賞受賞。

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