新メンバー対談「人生を変えた一曲」~第4回/大友 肇&勝山大舗
誰にでも、自分の中の何かが変わるきっかけになった音楽があるのではないでしょうか。
そんな一曲を肴に、紀尾井ホール室内管弦楽団の新しいメンバー二人が語り合う一夜。
第4回は「旨シ鶏ト旨シ日本酒」とともに――。(構成・文/宮本 明)
大友 話をするのは初めてだよね。何年生まれですか?
勝山 1986年生まれです。
大友 僕は47歳だから、だいぶ違いますね。お酒はけっこう飲むの?
勝山 あ、はい。ほぼ毎日ですね。ビールとか、家だと焼酎とか。大友さんはどうですか?
大友 飲むんですけど、最近は飲んでないなあ。
勝山 クァルテットの皆さんと飲んだりはしますか?
大友 クァルテット・エクセルシオは毎日のように一緒だからね。最初の頃はときどきあったけど、最近はあんまり4人で飲んだりはしないかな。
アンサンブルは、愛のない結婚!?
大友 ふだんは都響で吹いてるんですよね。もう何年ぐらいになるの?
勝山 7年です。ようやく慣れて、できることが少しずつ増えてきた気がします。
大友 都響には、エクセルシオのメンバーのご主人だったり、学生時代の仲間だったり、同世代の友人がたくさんいて、なんだか同窓会みたいな感じです。
勝山 大友さん、最近は紀尾井以外でもオーケストラで弾いてらっしゃるんですね。
大友 うん。東京シティ・フィルの客員首席を。ずっとこもって弦楽四重奏ばかりやってきたんだけど、最近はいろんなことをやりだして、違う視点で見えることも出てきたと思います。室内楽だけだと知ることができない世界というか、オケじゃないとできないレパートリーもあるしね。マーラーとか。
勝山 オケのリハーサル期間は数日だと思いますけど、エクセルシオだと、リハーサルってどれぐらいやるのですか?
大友 よく聞かれますけど、たとえば初めてベートーヴェンの弦楽四重奏曲を演奏した時は、半年ぐらいずっと、週に3~4日は練習してた。
勝山 どういうところが課題になるのですか?
大友 25年近く一緒にやってきて、だんだんお互いがわかっていくし、逆に頑固にもなってくる。合わせようとしてピタッと合えばいいかというとそうではない。夫婦と似てるかもしれませんね。東京クヮルテットの原田幸一郎先生が「弦楽四重奏は愛のない結婚だ」っておっしゃってた(笑)。
勝山 僕も室内楽が大好きで、すごく興味があるんです。僕が音楽を始めたきっかけは、たまたま入った中学の吹奏楽部だったのですが、そこはフル編成のウィンド・オーケストラよりも、アンサンブルが盛んな部活動だったんですね。だから僕もずっと四重奏とか八重奏とか、クラリネット・アンサンブルを中心にやっていたんです。オケに入ったのもアンサンブルがしたいから。ようやく少しずつ、オケのアンサンブルの楽しさが見えてきました。
「シューベルトの《死と乙女》」「僕もです!」
勝山 人生を変えた一曲。考えたんですけど、なかなか出てこなくて……。大友さんのお話を聞きながら考えようかと(笑)。
大友 僕はやっぱり弦楽四重奏曲になっちゃうんだけど。桐朋の研究科時代、エクセルシオのメンバーと出会って最初に一緒に弾いた時に、「なんだ、これ! すごい!」と思った。それまで経験した弦楽四重奏と全然違ったんです。その時に最初に弾いたのがシューベルトの弦楽四重奏曲第14 番《死と乙女》。あの4人の出会いがなければ、弦楽四重奏なんかやらずに、地元の京都に帰ってたかもしれない。
勝山 まさに人生を変えたわけですね。
大友 その意味では元凶ですね。あれで人生が狂った(笑)! 勝山さんは?
勝山 実は、乗っからせていただくわけではないんですけど……。さっきお話しした中学の吹奏楽部に入って、初めて聴いて感動したのが、昔の先輩たちがコンクールで演奏したクラリネット四重奏の《死と乙女》の録音だったんですよ。
大友 えー!!
勝山 顧問の先生のアレンジなんですけど、コンクール用なので制限時間の都合で5分に縮めてあるから、弦楽四重奏の人たちが聴いたら、「何やってんだ!」という感じだと思いますけど、プロになった僕がいま聴いてもすごく上手な演奏で。そんなわけで、当時一番夢中で聴いたのが《死と乙女》でした。完全に乗っかってしまって、すみません(笑)。
大友 肇 ●おおとも・はじめ チェロ | 勝山大舗 ●かつやま・だいすけ クラリネット |
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京都府京都市出身。クァルテット・エクセルシオ メンバー、東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団首席客員チェロ奏者。あだ名、はっちゃん。趣味は、映画や海外ドラマをみること。演奏家になっていなければ、料理人とかになっていた?プチ自慢は、自慢の子供たちがいることくらいでしょうか、自分自身のことではないですが····。あ、ホラー映画の魅力について、ちょっと語れます。(苦笑) | 神奈川県川崎市出身。東京都交響楽団クラリネット奏者。あだ名は、かっちゃん。趣味は、野球観戦とお酒を飲むこと。演奏家になっていなかったら、体格を生かしてプロ野球選手(中日ドラゴンズ)を目指したかったと思います。プチ自慢は、身長体重共に助っ人外国人とそんなに変わらないことです。 |